奇跡の地球物語「熱中症 体温と汗の秘密 」




最高気温が30度を超える真夏日。
35度を超える猛暑日が続き、ますます高まる熱中症の危険。
梅雨明けが例年より早かった今年は熱中症の救急搬送数が昨年より多く、今月2週目の時点ですでに3万9千人を超えている。

熱中症は気温が高い時に引き起こされるさまざまなことを指す。
突然襲うめまいや湿疹、けいれん、その時、体の中でいったい何が起こっているのか。
体温が上がると体は汗をかくとともに皮膚の血管を拡張させ、流れる血液の量を増やす。
そして、外気との温度差で皮膚から熱を逃がして体温を下げようとする。
だが、皮膚へ送る血液の量が急に増えると血圧がさがり、逆に脳に行く血液の量が減ってしまう。
そのため、めまいや湿疹が引き起こされる。

また、汗をかくと水分だけでなく塩分など人体に必要なミネラルも体の外に放出されてしまう。
そのため、そのため大量の汗をかくと、筋肉が異常に収縮してけいれんを起こす。

そしてそのまま水分補給をしないでいると、次第に汗が出なくなり、体は冷却器のを失う。
さらに体温が上昇し、もし40度以上上がると重度の意識障害になることもあるという。
卵を加熱すると固まるように、人体を構成するたんぱく質は、一度熱により変性すると冷やしても基に戻らなくなってしまう。
そのような危険を避けるために、人体は体温が40度を超えないようにするメカニズムがあるという。

体温について研究する井上教授に伺った。

【大阪国際大学教授:井上教授】
40度になると、脳から中枢性に疲労を起こしてくれる。
これが42度以上になった場合は、タンパクで出来た我々の体が、不可逆的にやられてしまいます。
特に脳が一番やられてしまう。 
だからうまい具合にこの2度の差ということが安全地帯っていいますか、まだ緩衝地帯なんですよね。
だから我々の体は40度になった途端に、それ以上、ものを動かさないようにします。」

人体が設定した体温の限界は40度。


限界の40℃を超えると、脳は疲労物質を出して体を動かさないようにし、それ以上熱が生まれるのを防ごうとする。
こうなると、すぐに体を冷やさなければ危険な状態である。
このような危険を回避するため、普段私たちの体は緻密な体温調節をおこなっている。
教授によると計算上、体重65キロのヒトが、時速10キロで走り、もし体から熱が全く逃げない場合には、30分ほどで体温は42度を超えるという。
それは身体のタンパク質が凝固し死に至る温度だ。
しかし一流のマラソンランナーは、それよりも速い速度で、およそ2時間かけて42キロを走り抜く。
彼らの体温は一体どのようにコントロールされているのか?

ここで哺乳類における体温調節方法を見てみよう。
多くの哺乳類は体温が上がると木陰で休んだり、水浴びをしたりする。
ゾウは
 大きな耳に血管を集中させており、耳を振る事で血液の温度を下げ、体温を下げるという事も行う。
犬などは、
 走った後に舌を出し、浅い呼吸を繰り返す事で体の熱を逃がす。
しかし,多くの哺乳類はあまり長い時間走れないという。
走ると熱を逃がすことが間に合わず,すぐに体温が上がりすぎてしまうのだ。
ライオンの場合数分ほどしか走れず、狩りが苦手ともいわれている。
速さこそ劣るものの、他の哺乳類より、圧倒的に長い距離を走れる人類。
それは私たちヒトの体が他の哺乳類たちとは一線を画す体の冷却機能「汗腺」を進化の過程で手にいれたからである。

人類が手に入れた汗という体温調節のメカニズム。実はそこに、熱中症の原因も潜んでいる。

■年を重ねるとなぜ熱中症にかかりやすくなるのか?



運動をするとき、人はどのようにして体温を調節しているのか?
ランニング中の体温の変化を観察してみよう。

【実験その1】
協力いただいたのは、ヒトの体温調節について研究する近藤教授と、井上教授のお二人。そして、陸上部員の大学生。
鼻の穴から温度計を体内に入れ、走っている間の食道の中の体温を観察する。
皮膚の温度は気温によっても変化するが、食道など体の中心部は環境による影響が少なくほぼ一定。
平常時は平均して37度に保たれている。
まずは室温25度。運動しなければ汗をかかない温度に設定。時速10キロでランニングをしてもらう。
走り出すと間もなく体温が上昇し始める。

約10分後・・・およそ37.5度に達したところで、一旦、体温の上昇が止まり、微妙に上下動を繰り返しながら少しずつ上昇していく。
この時カラダに何が起きているのか?
体温の変化とともに計測した額からの汗の量をグラフに重ねてみると・・・体温の急上昇とともに発汗量も急激に増えている。
次第に体温の上昇がゆるやかになると、汗の量の上昇も遅れてゆるやかに変わる。
汗をかいた事で、体温の上昇が抑えられているのだ。
30分後・・・今度は室温を30℃に上げる。運動していなくても汗ばむ温度に室温を上げ、同じ速度で走ってもらう。

【神戸大学教授:近藤教授】
体温自体は先ほどの25度の時とほとんど同じで、37.5、気温が上がったとしても同じ値を保ってますね


室温を上げても、体温の上がり方はあまり変化しない。
37.5度で一旦止まり、微妙に上下動を繰り返す。
室温が上昇した分、汗の量を増やすことで体温の上昇を抑えているのだ。時速10キロで50分走っても、体温は37.7度以上にはならなかった。

【神戸大学教授:近藤教授】
ちょっと体温が上昇し始めるとすぐに汗が出てくる状態ですね。
上がりすぎると、タンパク質が固まるような形になるので、そうすると元に戻らないので、そこに到達しないように脳の温度が上がれば、汗腺に命令を送って早く汗をだせと指令するという仕組みになっていますね。

体温が上昇すれば脳の温度も上がる。

額から大量の汗をかくのは特に熱に弱い脳を守るためでもある。
温度を色で表示してみると、汗をかくと頭の温度も下がっているのが分かる。

■汗がどうして体温を下げるのか?

 
それは、水分が蒸発する際、熱をうばっていく性質を利用しているのである。
これは気化熱といって、夏、打ち水をして庭先を涼しくするのと同じ原理である。
蒸発する事によって体から熱を奪う汗。
さらに、私たちの皮膚には、この汗の蒸発を促す進化の過程で手に入れたあるデザインが隠されているという。
汗が噴き出す箇所を拡大してのぞいてみると、汗はシワとシワの交わる部分から出てくる。
シワを雨どいのようにつたい、薄く広がることで、皮膚から汗を蒸発しやすくしているのである。
熱中症を予防するには、汗をかくことに加えて、汗を体から蒸発させることが欠かせないのである。

体の冷却機能、汗。


実は年齢を重ねるごとに汗のかき方は変わってくるという。
高齢者が熱中症にかかる前、体はあるサインを発していた。

昨年、熱中症が発生した時の気温と湿度を見ると、湿度50%あたりから気温30度以下でも湿度の上昇とともに熱中症の発生件数が増えていく。
気温だけでなく、湿度が高い日は汗が蒸発しにくいため注意が必要なのだ。
さらに、熱中症になりやすい人、なりにくい人の差は発汗能力の違いも一因だという。

【大阪国際大学教授:井上教授】
汗腺というのは、使わなくなると汗腺の感度といいますが、脳からの命令に対して働きにくくなります。
それと共にもっとそれが続きますと、汗腺が小さくなるような事すら起こってきます。
運動するなどして、普段からできるだけ汗をかくようにする
そうすると汗腺の能力は保てるし、トレーニングしていけば体の水分量も増えるという事が分かっています。
血液量、水分量が増える。
そうすると汗をかきやすい体ということを保つことができる。


空調設備の進歩により現代人は夏でも汗をかかず快適に過ごすことができる。
だからこそ、日ごろから運動をし、汗をかく機能を保つことが大切なのだ。

【実験その2】
では 高齢者ほど熱中症を引き起こしやすいのはなぜか。
老化による汗のかき方の変化を調べる実験をおこなった。
こちらは体にはる発汗チェッカー。かいた汗の量に応じて、白いラインが青く変化する。
座った状態で室温を27度から36度まで上げ、一時間。
60代と20代の汗のかき方が違う事がわかった。
20代は、額と脚、両方から汗がでている。
一方、60代は額から汗はかいているものの、脚はほとんど汗をかいていないのである。
これはどういう事なのか。

【大阪国際大学教授:井上教授】
体全身、同一に悪くなるという事じゃないんですね。老化というのは、順番に悪いところが広がっていく。
それがどうしても足からできなくなっていく。
頭はできるだけ最後まで守ろうとする反応があります。だから、頭は汗をできるだけかこうとするのが高齢者の方です。


年齢とともに汗のかく能力は、太もも・背中へと失われていき、60代になると汗の量は20代の85%まで落ちるという。
また60代以降は、脚の汗腺の老化を補うために、頭からの汗の量は逆に増える傾向にあるという。
続いて、運動して汗をかき始めるまでの時間、つまり発汗の反応の速さを調べる。
20代と60代に同じ負荷の運動をしてもらった。
すると、3分ほど経過したところで、20代男性の額からは大量の汗が噴き出してきた。 
ところが、60代男性を見てみると、殆ど汗が出ていない。
結局、60代男性の額から汗がにじんできたのは、運動を開始してから15分後であった。

【大阪国際大学教授:井上教授】
この熱量に対して、必要な汗の量に達するまで間違いなくエンジンのかかりが若い方が早い。
だから、皮膚のセンサーの感度が悪くなって、脳に命令がはいりにくくなる。 
それとともに、脳からだす反応性も悪くなる。命令も遅くなる。
すぐに汗をかけないという事が一番体温調節上は問題になります。


高齢者は汗の量が減るだけでなく、暑さに対する反応も鈍くなる。
気づかないうちに体温が上昇し、熱中症にかかりやすいのだ。

では、どうやって体温上昇に注意すればよいのか。


サインは最後までその機能が失われにくいという額からの汗だ。



【大阪国際大学教授:井上教授】
頭からの汗がでてくるというのが暑さを示すサインになると思います。
体のセンサーが熱いというのを感じにくくても、汗がでてくるのは、体自体は間違いなく暑さを感じていますから、それによって部屋の温度を調節するとか、ということを考えるのも一つの戦略だと思います。」


年をとっても額が汗をかく機能は保たれている。
暑く感じていなくても、もし額が汗をかいたら体温が上昇しているサイン。
熱中症を予防するため、冷房をつけたり、水分補給が必要である。

生まれたばかりの赤ちゃんは、まだほとんど汗をかくことができない。


体温を調節する力が弱く、温度の変化に注意が必要な時期だ。そして、赤ちゃんは育つ環境に応じて徐々に汗をかく能力を身に着けてゆく。
【【神戸大学教授:近藤教授】】
生活する環境にものすごく汗腺自体が適応しやすくて、生まれて2,3年でその汗を出す汗腺の数が決まる。
我々の体には水が重要ですので、例えば男性であれば体の成分は60%位が水分、それだけ重要なものを出しながら体温をコントロールするという事は、むやみに汗腺の数を多くしてしまうと、すぐに水がカラダから出ていってしまう。
そこで、いろんな環境に適応しやすいように、例えば寒い環境で生活する人には、あまり汗は必要がないので、その場合には汗腺の数自体多くする必要がないという適応がおこっているのではないか。」


赤ちゃんは、全身に約200~500万の汗腺をもって生まれてくる。
しかし、そのすべての汗腺が使えるようになるわけではない。
生まれてから約2~3年の間、過ごした環境によって脳の指令に反応して、実際に汗を出すことができる汗腺の数が決まるというのである。
環境に応じて、必要以上に水分を放出することなく、体温を調節するのに適した汗をかくことができるようになるのである。
さらに、大人になって生活環境が変わったとしても、一つの汗腺からの発汗量が変化し体は、順応できるというデータもある。


今からおよそ700万年前、アフリカで生まれた人類は、食料となる獲物を追いかけて狩りをしていた。
熱帯で暮らしてゆくため汗をかき、効率よく体温の上昇を抑える。
汗をかくのはそのころから生き抜くために欠かせない機能だったはずだ。
そして今、猛暑に悩まされる日本で、この体温調節機能が私たちの健康を支えている。






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テーマ:情報番組 - ジャンル:テレビ・ラジオ

[ 2013年08月21日 16時30分 ]
奇跡の地球物語
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